被れたハート、その凱旋とトラウマ
雄をさんざん翻弄した空中戦の勝者、破れたハートマークの雌が、
私の目の前に戻ってきました。
右翅は左より傷みが少なく、代わりに彼女を襲った鳥の嘴の形がより明瞭に見えています。
・・・彼女の行動には、ほかのアオスジアゲハと違う特徴が二つあって気になっていました。
この近辺を飛ぶアオスジアゲハは、こんな竹林の陰の人通りが多い道路際なんぞでなく、
陽のあたるもっと高い場所に生えた木で吸蜜するのが常で、
下まで降りて来るものがあっても、すぐに上に戻ってしまうことばかりでした。
選り好むように日陰の低い場所ばかりで吸蜜して、人が近づいても逃げない、
そんなアオスジアゲハは彼女が初めてでした。これが、一つ。
・・・もう一つは、飛んでくるものへの過敏症、とでもいえる行動です。
先ほどは、雄が飛んでくるや飛び立って、空中戦となりましたが、
それまでも、自分に向かって何か―しじみ蝶でも蜂でも―が飛んでくるたびに飛び立って、
空を大きくアクロバット飛翔しては戻ってくることを、繰り返していました。
・・・。
もしかすると彼女が鳥に襲われたのは、木の高い場所にいた時で、
それがトラウマになっているのではないか。
だから低い場所のほうが安心できるようになって、
飛んでくるものがあれば過剰に反応しないではいられなくなったのではないか・・・。
全て私の想像にすぎませんが、
蝶も人も同じなんだと、彼女の気持ちが分ってきた気がしたことでした。


















コメント
成程、防衛本能ですか・・・。hanexさんの見事な観察と推理力で蝶の生態の
一端が良く分かりました。
蝶の翅、勿論移動するためにあると同時に、自分の命を守る
大事な器官でもあったのですね。
貴重な作品と分かりやすい「ナレーション」で大変勉強になりました。
ありがとうございます。
KUSAMAKURAさん、鳥が蝶を襲ってビークマークをつけて、更に追って仕留める・・・
そんな一連の画像をネットで見たことがありますーー;
あれは襲われたほう、恐ろしいですよトラウマになりますよ。
と思いましたねー。
大多数のアオスジアゲハとは違う行動パターンだったことからみて、
彼女の反応は「生得的な行動」ではなくて「個人的な学習」、
いや、その過剰さから「トラウマ」でいいんじゃないかと思って、
この言葉を使ってしまいました^^;
「連作」を投稿する場合は、
間をあけないほうが見てくださる方の負担にならなくて良いと思いつつ、
本文の準備や構成だけでも時間がかかりすぎて、
私にはこのペースがせいぜいでした。
結局最終回の2枚に全部押し込んでしまった構成も気になっていました。
お伝え出来たでしょうか。ああ、良かったあ。
ずっと丁寧に追って付き合って下さって、
貴重で分りやすいという御言葉まで下さって、
嬉しさと感謝でいっぱいです。何時も何時もありがとうございます^▽^
ケンタロウ・jpさん、私もそう思ったんですよ゚▽゚!
蝶なんて何も考えていない、
生まれつきの条件反射だけの生き物みたいに見られていることが多いですよねー。
蜜蜂や蟻の頭の良さについては知っている方も増えて来ていますが、
実は蝶も試行錯誤して学習する、幼虫時代の記憶も残っている、ということが、
21世紀に入ってどんどん明らかにされつつあるようです。
そういうことを知っていたにも関わらず、
私は、「鳥に襲われた」経験が蝶の行動に影響を及ぼす可能性に、
なかなか気づくことができませんでした。
私には、蝶なんて寿命も短いし、
学習したって後に役立つわけでもないだろうという意識もあったようです。
でも、「鳥に襲われた」なんていう恐ろしい経験、
人間ならトラウマものだなあと。
考えてみれば、後に影響しないわけがなかったのでした。
フィールドで生き物を撮ることの発見の面白さを、
改めて感じた次第です゚▽゚。
何時も大変嬉しい御言葉をありがとうございます^▽^